クマ類は個体数が少なく繁殖率も低いため、狩猟獣の中でも特に注意深い保護管理が必要です。保護管理のためには、生息数とその動向を知ることが重要です。
地方公共団体等が実施するクマ類の個体数調査に対して標準的調査法を提供することを目的として、個体数推定におけるヘア・トラップ法(遺伝マーカによる標識再捕獲法)とそれに関連するDNA分析法、補完法・代替法及び個体群モデルによる個体数推定法の開発に関する研究を行います。
(1)ヘア・トラップ法による個体数推定法の確立に関する研究
モデル地域における、トラップ間隔、再捕獲率パラメータ等の入手による高精度個体数推定法の開発。
(2)個体数推定に関わる効果的なDNA分析法の確立に関する研究
ヘア・トラップ法におけるDNA分析プロトコルの確立及びデータの精度管理と標準化を行うデータ解析環境の開発。
(3)補完法・代替法の開発に関する研究
カメラトラップ画像の個体識別精度向上及び生活痕跡密度調査等の個体数推定法への応用技術の開発。
(4)個体群モデルによるモニタリング手法及び生息数推定法の確立に関する研究
個体数推定式の改良及び個体群パラメータと捕獲数動向によるクマ類の個体群モデル構築技術の開発。
平成21年度 | モデル地域における大面積ヘア・トラップの予備調査を行い最適設定方法を明らかにします。ヘア・トラップで採取した試料のDNA分析法の標準化を行います。 |
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平成22年度 | 大面積ヘア・トラップの実施調査を行い手法の標準化を進めます。採取したDNA試料を標準化法で分析するとともに、解析環境の共有プラットフォームを開発します。補完法・代替法とヘア・トラップ法による生息数推定精度を比較し、各方法の個体数推定確度を求めます。 |
平成23年度 | モデル地域で開発したヘア・トラップ法とDNA分析法をヒグマに適用しその有効性の検証を行います。また、個体群モデルによる生息数推定法を取り込んだヘア・トラップ法、DNA分析法及び補完法・代替法について、調査マニュアルを作成します。 |
研究は次のように、これまでの調査法に比べより効率的と考えこのられるヘア・トラップ法の確立を主な目的として、4つの研究テーマが相互に補完する形で進めています。
この研究では、岩手県北上山地と北海道南部を主な調査地としています。
この研究は次の体制で実施しています。
(1)ヘア・トラップ法の確立
米田 政明(自然環境研究センター、研究代表者)
常田 邦彦(自然環境研究センター)
間野 勉(北海道環境科学研究センター)
佐藤 喜和(日本大学)
(2)DNA分析法の確立
玉手 英利(山形大学;DNA分析班研究代表)
釣賀 一二三(北海道環境科学研究センター)
山内 貴義(岩手県環境保健研究センター)
湯浅 卓(株式会社野生動物保護管理事務所)
近藤 麻実(北海道環境科学研究センター)
(3)補完法・代替法の開発
三浦 慎吾(早稲田大学;補完法・代替法研究班代表)
青井 俊樹(岩手大学)
(4)個体群モデルに関する研究
松田 裕之(横浜国立大学;個体群モデル班研究代表)
堀野 眞一(森林総合研究所)